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第2回

あったか〜い(もの)あったか〜いあったか〜い

 二月に入り、暦の上ではもう春ですが、まだまだお寒い日が続いております。皆様如何お過ごしでしょうか、お伺い申し上げます。昭和三十三年七月二十四日未明、福井県敦賀市のとある産院で産声を上げられたのが、後に世界を駆け巡る「俳句界の奇才」越冬こあら【宗匠】その人であった……と、今回は、こんな唐突なイントロしか思いつかない【宗匠】なのだった。
「それもこれも寒さの所為よ」と嘆きつつ、愛犬がんたん号とご近所を(路傍観察的に)散歩していたその時、突然! 大地の叫びを聞いたような(大げさ)気がして、ココロが震えた。大地の叫び詳細は、下記の如くだ。

【作品4】
 自販機、つまり自動販売機(の短縮形)なんですが、その自販機の前面アップ(写真参照)より

  あったか〜い(もの)あったか〜いあったか〜い

  「暖か〜いモノあったか〜いあっ高〜い」

注)『なんだ、駄洒落じゃん』などと、結論を急いで核心を突かないように。(急いては事を子孫汁)

 つまりこういうことである。厳寒の中、暖となる飲料を探しに自動販売機に赴いた友人Aに後方から友人Bが呼びかける。
「暖か〜いモノあったか〜い」
 その声に促されるように友人Aが販売機を眺めれば、昨今の価格破壊で、場所によっては百円とか八十円で売られている缶コーヒーが普通の百二十円(メーカー品ですから)だったので「あっ高〜い」と嘆いたといった状況を詠んだ句、格差社会の矛盾と青春時代の永遠の友情を詠んだ句なのである。

【宗匠鑑賞】
 なのであるにはあるが、「暖かい」をより暖かく感じて頂けるように標記を赤地に白抜き黒縁取りで「あったか〜い」(丸ゴチック体?)としたまでは、まあ、許せるとしても、全ボタンに御丁寧に同じ文句を並べるのは勘弁してほしいところなのである。
 1「ひらがな標記」、2「“〜”マーク」、3、「赤ボタン」、4「連々続々」と販売者側の「媚」をガシガシガシガシとシツッコ〜ク感じてしまうのである。清涼飲料界の王者の威厳、世界的老舗の品格が感ぜられず、あまりと言えば、あんまりにザンネンなのだった。
 そこで、

【宗匠添削】
 暖かや押して欲し気な赤釦(あたたかや/おしてほしげな/あかぼたん)

【宗匠鑑賞】
「暖か」は春の季語。ボタンを擬人化することによって、待ちわびた春に対する、はやる思いが浮き彫りにされている。また「赤釦」と漢字表記にすることによって、句全体が引き締まり、凛々としてしなやかな秀句となった。ちなみに、釦は違うが牡丹は夏の季語(駄洒落かよ!)なのだった。




文と写真:越冬こあら/09年2月1日■
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