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DATA:08年6月30日月曜日・於Super Deluxe・東京都港区西麻布3-1-25 B1F


佐藤yuupopic
詩人。1973年東京生まれ。天秤座のA型。各地を転々とした後、ふたたび東京に住む。東京造形大学卒業後、映画・テレビの仕事を経て、いまは言葉で映画を撮っている。2007年秋に第1詩集『トランジッション』を刊行。
佐藤yuupopic(Artist of QBOOKS)
空中海岸*佐藤yuupopicの詩と日々blog*


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No.01
SOUNDROOM Vol.21 -地平線の音楽3-

 先日とあるご縁でお目にかかった音楽レーベル・360°records主宰で映画音楽、ライターなどでも活躍中の虹釜太郎氏のご紹介で、ご自身もDJとして参加されているSOUNDROOM(サウンドルーム)に足を運んでみました。

 SOUNDROOMとは音楽レーベル・Commune Disc主宰の鈴木康文氏主催で、今回で21回目(あと三回で二年目ですね!)を迎える響系音楽ライブイベント。毎月最終月曜の夜に六本木のSuper Deluxeで開催され、エレクトロニカ、ポストロック、即興音楽、ノイズ、実験音楽等々、様々なジャンルを紹介している。今月はその「地平線の音楽」と銘打った三回連続シリーズの最終第三夜目。

 ということで。音響系音楽に造詣が浅いどころではない上に、最近の音楽や美術、カルチャー全般の動向に疎くかなりキケンな感じの身にて、不安な思いにかられながらも、その反面「知らない何かに遭遇出来るのでは?」というドキワク感いっぱいで足を踏み入れた佐藤。

 はじめは週のアタマの浅い時間のため、ラウンジに人はまばらだったが、次第にフロアに人が集まりだして、音、アルコール、おしゃべり、それぞれに小さな、大きな、さざ波のようなざわめきが生まれはじめる。夜の遊びで好きなのはこんな何気ない一時だったりする。
 陶芸や農業やプリミティブに身体を動かすことを原テーマにおいたようなVJ映像がフロントの打ちっ放しのコンクリの壁をスクリーンに映し出される中、エレクトロニカ、ロックテイスト、アニメーションポップ、的にきらきらとザクザク、ビキビキ、時にはリラックス〜と、展開されるDJタイム。そしてそのプレイを合間にはさんで三組のゲストによるライブが繰り広げられる。

Ryu Konno×千葉広樹

 一組目のRyu Konno×千葉広樹はターンテーブル/CDJとコントラバス/エレクトロニクスの男性によるDUO。Konno氏がターンテーブルで生み出すビートと、リミックスされた物語性のあるキーワード的な言葉、エレクトリカルでありながらエキゾチックであるメロディとスクラッチに、千葉氏のエフェクトをかませたコントラバスの音響、弦のアタックで応酬するセッション(ことに、たたみ込み、互いに互いの反応を受けて呼応し合う後盤のパフォーマンスから目が離せなかった)で会場をヒートアップさせる。

U+UCO

 かと思えば、二組目のチャーミングな女の子二人ユニットU+UCO(ユウとユウコ)は、ノートPCに接続したバーコードリーダーで全身にタトゥーのように貼りまくったバーコードシールを読むことで、データを音→音楽へと変換させるという表現。次第に観客の顔や身体にまでバーコードシールを貼り、どんどん読み込んで行く(わたしもほっぺたに貼ってもらってピッと読み込んでもらいましたとも!)観客巻き込み型のパフォーマンスで、いつしか場が不思議に楽しい連帯感に包まれる。


月の海

 そしてトリを飾った三組目、月の海はギター×ベース×女性ボーカル×カホン(ほか様々な楽器)という四人編成のバンド。途中で短い歌詞の朗読があったり、足で演奏するハンドベル、スライドホイッスル、ピアニカ、レインスティックやマラカス、ほか名前も知らない楽器達が駆使され、次々に現れる展開を目の当たりにしているだけでも楽しい。口の中で音と言葉を響かせるような揺れのあるボーカルが、異国的であったり異星的であったりフォーキーであったりする楽曲のゆらぎと相まって、会場が心地よい余韻に包まれた。

 このように三組のジャンルの異なったアーティスト達のライブパフォーマンスは、一見して全く関連性がないように思われるのだけれど、「音楽」という表現を媒介として微妙な接点で絶妙に結ばれたこのラインナップは、シリーズ名に銘打った「地平線(ちへいせん、horizon)地面と空の境界をなす線のこと。 あるいは、可視地表面と不可視地表面を区分する仮想の境界線」という定義を、イベントイメージに存分に反映しているように思えて興味深かった。
 鈴木氏曰く、どの辺に「音楽」を感じて心が動くか、いわゆる「グッとくるか」は人によって異なるので、それぞれの様々な振れ幅の境界線を探りつつ、マージナルな部分で心の琴線に触れるような音楽を提供する、選択肢がいくつもあるようなブッキングを心がけておられるそうだが、まさにそれを肌で感じることが出来た。

 また「月曜の晩であることを感じさせないような、一週間のはじまり、明日からの仕事、朝起きた時の気怠さ、そんなものを全てこの場にいる時だけはぽっかりと忘れてしまうタイムポケット、エアポケットのような空間を作りたい」とのことだが、会社帰りに一人でふらっと訪れたわたしは、ライブタイム以外はソファで本を読みながら(わたしは一人で飲み屋やバーのカウンターで本を読みながらボーっと飲む時間が極めて好きだ)、音や映像を身体で感じ、普段触れることのないジャンルの音楽に出会い、主催者の思惑にピタッとはまりまくって、心地よい時間に身をゆだねたのだった。

 次回は「フリーサウンドやジャズをテーマに即興的に立ち上がる音楽をテーマにお届けします」とのこと。「どこまでがジャズでジャズじゃないかというところを探していくような感じ」が展開される予定だそうです。なんてマージナルなイベントなのでしょう! ますますドキワクじゃないですか。どうかみなさまも曖昧な境界性にビキバキ魅了されに八王子から足をのばしてみてください。週のアタマの憂鬱感をふっトバしてくれること必至です!

 ということで、まさに月曜日の夜とは思えないような、時間の感覚が失われる不思議で興味深い余韻を身体の内に覚えながら、六本木の街の地上から帰りの地下鉄に潜ったのでした。

以上、レポーターは詩人・佐藤yuupopicでした!!!!! See You Nextこのページで!!!!!(って次回は果たしてあるのか?)

■次回イベント情報
「SOUNDROOM Vol.22-free?Jazz?1-」
日時:2008 7/28(月)
時間:open 19:00/(23:00〜free、26:00 end)
料金:door \1000-
SOUNDROOM Vol.22 -free?Jazz? 1-
Presented By SOUNDROOM & Commune Disc
出演:坪口昌恭+AEN+Soundworm+Jason Funk(from Helll)
AKTION Directe(Yamamichi Akira+Cal Lyall+Masatsugu Hattri)
DJ: KUKNACKE、虹釜太郎、鈴木康文、37A
Shop:パリペキンレコード、エルポヨロコ
7/28(月)19時開場&スタート 1000円
場所:Super Deluxe 

SOUNDROOM公式サイト SOUNDROOM公式ブログ/ Commune Disc公式サイト 360°records公式ブログ




取材と写真:佐藤yuupopic/08年6月30日月曜日■
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