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DATA:文字工房 楽善堂
●〒192-0072 八王子市南町1-1
●電話042-622-1976
●Fax.042-621-0596
●定休日:日曜・祭日・第4土曜日
●営業時間9:00〜19:00
●JR八王子駅徒歩8分/地図
●店長:四代目楽善堂平澤東・労働大臣認可印鑑彫刻一級技能士



八王子の店長さん、お元気ですか?

No.02
印鑑のココロ、わかります?

 今回は南町にある文字工房楽善堂の平澤店長さんをお訪ねしました。
編集室:印鑑は日常生活や仕事で欠かせない大切な道具の一つです。楽善堂さんの印鑑へのコダワリなどお聞かせ下さい。
平澤:楽善堂では手彫り仕上げの印鑑をご提供しています。最近は彫刻機械で彫りっ放しの仕事がふえてきましたが、値段を安くするには手を掛けないが一番ですよね。印鑑の制作過程はおおまかにいって、字入れ⇒荒彫り⇒仕上げとなります。仕上げの作業で文字の起筆表現、終筆表現などをつけていくのですが、荒彫りで終わりにすれば、仕上げが要らなくなるわけなんです(笑)。
 あと、お客様にとっては、彫りあがった印鑑がどんな文字になるのか不安なこともありますよね。楽善堂では、印稿(ラフデザイン)といって、こんな感じになりますとご覧にいれることも可能です。印鑑、とくに実印や銀行印に使う書体は、篆書(てんしょ)といって、文字によっては全く楷書と違ってしまう字があるんです。「田」とか、「中」などは篆書になっても判読し易いのですが、男性の名前によくある「也」とか「介」の字などはまるで変わってしまいますから。
編集室:店内に表札とか提灯がありますね。これは?
平澤:楽善堂は「文字工房」でもあるので、文字を切り口とした商品もいろいろと扱っています。表札、提灯、焼印といった商品です。表札は床の間に飾っておくものではないので(笑)、八王子、日野市内なら、門柱や壁への取り付けの仕事も承っています。
編集室:普段接客で心掛けていることはありますか?
平澤:まず、お客様のお話しを「よく聞く」ことです。セールストークなんて言葉がありますが、私はトークよりもリッスンのほうが大切だと思っています。とくに、私の店で扱っている商品は95%がオーダー商品です。ということは、ご注文主のお客様のご希望、お好みを「よく聞く」ことがポイントになります。お話をいただいた後、「それならば、こんな印鑑、こんな書体はいかがでしょうか」とご提案ができるわけです。
編集室:「トークよりもリッスン」というのは面白いお考えですね。それでは、お仕事についてのお好きな言葉などありますか?
平澤:『印人』です。辞書には出てきませんが、「印を作る職人」程の意味です。私が3年お世話になった、両国の師匠の店に掛け軸があり、この言葉がありました。「インドの人」ではありませんよ(笑)。
編集室:印鑑職人の修行時代のことですね。ほかにも楽しいエピソードがありますか?
平澤:まだ20代の頃、急ぎの仕事を請けて、何とか翌日の朝に間に合わせたのですが、粋な奥様で、商品代金のほかに「これでお茶でも」とおっしゃって、1000円札を出して下さったのです。当時でも喫茶店のコーヒーは500円しませんでしたからね(笑)。値切るお客様もいらっしゃいますが、余計に出していただけるお客様は、誠にありがたく、嬉しいものですね。
編集室:同感です(笑)。



右端の円い道具は坊主または棒台というものだそうです

編集室:印鑑の買い方についてアドバイスしてもらえますか。
平澤:まず、使用用途をお店の人に伝えるとよいでしょう。実印なのか、銀行印か、仕事で使うのか。ギフトなら、相手の方の年齢などです。例えば、仕事用の印鑑なら、周りの仕事仲間が印鑑の文字を判読できないといけないです。逆に、銀行印や実印なら、周りの人は読めなくてもいいわけです。
 仕上がりの文字に不安があるなら、どんな感じに仕上がりますか? といって文字をラフで書いてもらってもいいでしょう。 ネット購入でなく、実店舗で買うなら、実際に印鑑の材料を手に取って見て、印鑑の肌触りを確かめてみるのもよいでしょう。洋服を買う時に試着するのと同じです。

編集室:印鑑はある意味で一生ものですから、自分の肌に合った感覚は大切かもしれませんね。お店の商品情報などありましたらお知らせ下さい。
平澤:文字関連商品で四文字熟語の携帯ストラップを売り出しました。「一期一会」や「晴耕雨読」などです。学校では習わない「商売繁盛」「合格祈願」なんてものもあります。オーダーでも作れるので、ご自分のお好きな四文字熟語を入れるとよいでしょう。お値段はオーダーで作っても630円(税込み)です。
編集室:630円はお手頃感覚ですね。
平澤:今回、編集長にお会いして名刺交換しましたよね。 その時に下のお名前が「周一」さんでした。実は私の弟の名前が「周」と申しまして、お名前が近いのに少し驚きました。「周」の字は、お名前には余り使用頻度のない字ですね。画数で行くと「周」が8画、「一」を足して合計で9画ですね。「9」という数字は、日本では「苦」に通じると嫌われますが 、中国では陽の数(奇数)の一番多い数で、むしろ縁起がいい。9月9日を重陽の節句といいますよね。
 普段、お客様のお名前をいただきながら仕事していて、とくに下のお名前を拝見した時に、その方のご両親がどんな思いでお名前を付けたのだろうか、などと思うことがあります。 はんこ屋ならではの『仕事冥利』かもしれませんね。
編集室:お話をお聞きして、名前って大切なんだなあと思いました。今日はお忙しいところを有難うございました。と、冷たいお茶、ご馳走さまでした!


店長・平澤東さんのプロフィル:昭和33年2月生まれ。上智大学文学部卒。 昭和59年、正文堂(墨田区両国)にて印鑑職人の3年間の修行を終える。 平成4年、労働大臣(当時の呼称)認可、一級印章彫刻技能士の資格を取得。 平成6年、全日印連技術競技会で銅賞(実印の部)を受賞した。



取材と写真:マニエリストQ/08年7月26日■
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