連載エッセイ●34
貼り紙せよ! の奨め
連日、おのれの目や耳や頭まで疑いたくなるニュースばかりの今日この頃です。社会が悪い、親が悪い、学校が悪い、あれも悪いこれも悪い、貧乏が悪い、裕福が悪い、孤独が悪い、過保護が悪い、前世が悪い、夢見が悪いetc。どうにもこうにも、全体的に責任転嫁体質とでもいえるような、とにかく誰かがなんだか悪い、らしい。
「世の中が面白くないからと他人を殺してはいけません」と教えなかった学校が悪い、「切り刻んだ人間を流してはいけません」と貼り紙していなかったトイレが悪い、「生意気な妹をバラバラにしてはいけません」と教えなかった親が悪い、「マンションでは隣人を殺さないで下さい」と契約時に約束しなかった不動産屋が悪い、「ホームから人を突き落とす目的で入場してはいけません」と切符を売るとき注意しなかった駅員が悪い、「いかなるときにも酒瓶で殴り殺したりしないと誓うか」と挙式時に誓約させなかった牧師が悪い、「歩行者天国に突入する目的では貸せません」と確認しなかったレンタカー屋が悪い、止めてくれなかったお前らが悪い、という理屈が堂々とまかり通る今、されたら困ることを徹底的に書き出して貼り紙することくらいしか防衛策はない、と思う。
秋葉原では歩行者天国が早々となくなったそうだが、そんなことより何よりも、「無差別殺人禁止」の貼り紙で、まず「禁止」が、いの一番に大事です。指示待ち症候群といわれる「言われたことしかしない」子たちが、言われなかったことを自らしようと目覚めた時、なんだかとんでもなく変な事を思い切ってやっちゃうからね。「ダメだよ」と言っておけば、言われたとおりやらない子たちもいる(かもしれない)。いずれの事件も犯人だけが悪いと言いきれないと思えば、親も教師も牧師も坊主も政治家もマスコミも、それぞれの立場で一人一人が反省したり、関係ないと切捨てないで、自分も一因かもねと思うこと。すれば、びっくりニュースにも反面教師的価値が出る。
 秋葉原で大人気のおでんカレーを食べました。パッケージはピンク色。「召し上がれお兄ちゃん」とメイドさんの絵が描いてあります。そう言われてみれば、おでんをカレーに入れてはいけません、という貼り紙は見たことないし、いいんだおでんがカレーでも。もちろん、私にだって文句はないです。だけど、見た目はカレーっぽいルーなのだが、味がものすごくおでんであって、口にした全員が、ぶははと笑って言葉を失う程の変な物でした。とだけは言っておきます。

左槙子(ひだり・まきこ):どこにでもいる普通の主婦。数人の子供と一人の夫。そのほか数え切れない動物達と暮らしている……らしい。

写真:猫がどかないから原稿が書けない。と、槙子が言うのを何度か聞いたことがある。責任転嫁のお手本的発言である。――by 大久保謡子(おおくぼ・ようこ)

左槙子のカレーてんこ盛りページ:レトルトカレーを極める会・食品庫・エッセイに登場した名誉あるカレー様達。遊びに来てね。

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